それでも好きだよとそっと囁いた

ぷらいべったーで描いていたものを、加筆修正。

キャラクターについては、健全サイトF+L+Nの「ルフティガルド戦乱」キャラクタ参照の事。(リンクを押すと別窓で開きます)


 カイン達が魔の国ルフティガルドに向かう旅は始まったばかりだが、先は長く、日々、仲間の健康管理にも気を遣う。
 風雨を何とか凌ぎ、夜は魔族の奇襲に備えなければならない。
 町や村の間隔が長くなればなるほどそれを強いられる日も長くなり、仲間の心身は疲弊する。
 そんな日々だから、街が近づいてくると――仲間の顔にも明るさと生気が戻っていく。
 誰かがまとまって住んでいて、温かい食事と暖かい寝床を提供してくれる。それは非常に重要な事なのだ。
 カイン達もそんな旅人達の例に漏れず、ミ・エラス共和国の街に立ち寄って、宿が取れるとほっと安堵の息を漏らした。
「よかった、これで今日はゆっくり眠れるね」
 そう弾んだ声を出したのはシェリアで、兄であるラーズに心底嬉しそうな顔を向けている。
 ラーズもそうだねと同意し、笑い合う兄妹の仲むつまじい様子を見ていたレティシスも、顔をほころばせていた。
 各自夕食まで自由に行動して構わないという事になったが、どこかに出かける前にまず風呂に入りたいという皆の意見は合致しているようである。
 特にシェリアは食事よりも先に風呂に入りたいという事だったので、彼女は荷物を置くと必要なものを取り出し、いそいそ浴場へと向かっていった。
 カインは身につけていた籠手や鎧を外す作業をしていたところに、シェリアが慌てて戻ってきたのだ。
「まだ数分しか経っていないが……いささか早すぎないか?」
「ちが、まだ、はいってない……ううん、はいって、たみたいだけど」
 息を切らしつつ、顔を赤らめて何かを告げようとするシェリアを、カインは不思議そうな顔で眺め、ああ、と声を出した。
「誰かが先にいたんだな」
「う、うん……。それで、この宿、お風呂は混浴で……」
 混浴の風呂は大して珍しい事ではないのだが、見知らぬ男と二人っきりはさすがに嫌だろう。
「わかった、一緒に行くから待ってろ」
 重たげな鎖帷子の裾を握って脱いでいるカインへ、ダメなのと更にシェリアはかぶりを振って拒否し続ける。
「……今行ったらダメ」
「はあ?」
 鎖帷子を脱ぎ終わり、手ぐしで乱れた髪を直すカインは、面倒くさそうな声音をシェリアに投げかけた。
 いまいちはっきりしないシェリアの物言い。
 彼女は顔を赤らめ、もじもじと軽く身を揺すり、言いづらそうに――口を開く。
「お風呂場で、知らない男女がエッチしてたから……」
「ああ……そういうことも、多少起こるようだな」
 不特定数の男女が裸でいるのだ。中にはそういった節操のない輩も多く集まる浴場もあると聞いている。
 見知らぬ男に襲われる事もあるから、部屋や設備を整えて男女別にしている宿も最近多くなってきたらしいが……全てが対応に出たわけではない。
「ここはそれなりに大きな街だ、男女別の大衆浴場くらいあるだろう。街に出て探すか」
「うん……お願い、一緒に来て」
 一人で見知らぬ土地を歩くのも怖いのだろう。カインへ懇願するシェリアの表情も不安でいっぱいの様子だ。
 カインが無言で頷くと、明らかに安堵した様子を見せている。
 軽装になると、カインとシェリアは宿の亭主に男女が別々に入浴できる場所はないかと聞き、多少値は張るが快適だという場所を教えてもらうと宿を出た。



――までは、よかったのだが。



 カイン達は、気がつけば不思議な施設に通されていた。
 広いベッドが備え付けてあり、室内の明かりは薄暗い。
 光量を調節する事は可能だったが、光量設備をいじらないで欲しいという注意書きが貼ってあったため、断念するしかないようだ。
「――なんだ、ここは……宿か?」
 宿を取ったのに、また宿を取ったのかとカインは悔やんだが、シェリアはそんなカインの苦悩を知るよしもない。
「見て、お風呂はお部屋に備え付けてあるみたい……大桶みたいなサイズだけど」
 シェリアが部屋の先にある扉を開き、タイル張りになった浴室を指す。
 その後をカインもついて行き、シェリアの後ろから覗き込むと、確かに大人二人が入れる程度のものが設置してある。
 大桶――ここではいわゆる浴槽――に水道管と思しきものが通され、そこから湯が流れ込んでいた。
 シェリアが手を風呂桶に入れてみるが、湯は熱すぎず温すぎず、入るのにもちょうどいい。
「誰も来ないみたいだし、お風呂入っちゃうね」
 すこぶる嬉しそうにいうと、シェリアはカインの身体を浴室の外へ押しやり、衣服に手をかける。
 着替えは持ってきたが、さすがに今着ている服は汗臭い。ここで洗濯も出来たらいいのになと思いながら下着も脱ぎ、浴室内を改めて見回す。
 石鹸は備え付けておいてあるようだ。手にとって匂いを嗅いでみると、花のような甘い香りがする。
「いい匂いの石鹸……。この辺で売ってるのかな?」
 あまり流行は分からなくとも、新しい石鹸や香料は使ってみたいのだろう。
 シェリアは湯を身体にかけてから、その石鹸をタオルにこすり付けて使ってみると……香りのおかげか、彼女の胸に幸せな気持ちが広がる。
 風呂に入れるというのは実に幸せな事だ、と思いながら、鼻歌交じりに身体を洗っていると――僅かな異変を感じた。
 この石鹸、泡立ちはいいのだが、肌に付くと妙にぬるぬるする。
 泡が滑らかすぎるのだろうか、と自分の手で肌に触れてみたが、やはりぬるつくというか……そう、油分が多く含まれているような感じだ。
「肌は、しっとりするかも……」
 部分的に洗い流して匂いを嗅いでみると、まだ花の香りは残っている。
 石鹸自体は粗悪な気はしないので、そのまま身体を洗っていると……花の香りが強いせいか、油分による肌への感触か……妙な気分になってきた。
――さっき、お風呂場で見ちゃったからかな……。

 先ほどの宿屋……浴場で、行為に耽っている男女を見てしまったせいだろうか。
 脱衣所に入ってすぐ、女性の逼迫する声が聞こえたため、泣いている人がいるのかとこっそり様子を伺ったところ――男性が座っている上に女性が跨がって嬌声をあげているところだったのだ。
 自ら腰を振り、うっとりとした顔で受け入れている。入り口に屈んでいても、この状況を処理しきれないで固まっているシェリアが見えたのだろう。
『あの姉ちゃん、ヤリたそうな顔してこっち見てるぜ』
 と笑われ、我に返ったシェリアは覗いてしまったという罪悪感を抱え、急いで部屋に戻ってきたのだ。

 しかし、あんなふうに誰が来るかも分からない場所で行為に耽っているなんて。
 だからこそ、あんなに興奮して乱れていたのか。
――お風呂場でエッチな事をしたら、そんなに気持ちいいの……?
 身体を洗う手を止め、シェリアは自分の胸に視線を落とす。
 ちょっと触るだけなら。そんな好奇心で、自らの胸を包むようにして触れ、円を描くように揉む。
「んっ……」
 石鹸のぬるつきもあって、小さな快感がざわざわと肌に走る。
 ここ数日、カインと肌を合わせていない。状況的にも精神的にもそれどころではなかったが、そういえばと認識すると、なぜか少し――淋しい。
 乳房の下から上へ掌を滑らせていくだけで熱い吐息が唇からこぼれ、シェリアの意識は次第に行為を続ける事へ没頭していく。
――この手が、カインのだったら……もっと、違うところも……?
 つんと尖ってしまった乳首を指の腹で触れ、空いている手はするすると下へ向かう。
 臍を過ぎても止まらず、指先で水に濡れた恥毛をかき分けながら秘所に触れると、シェリアの身体がぴくりと跳ねた。
 胸に触れていただけなのに、既にここは熱く潤みを帯びているのが分かって、自分がとても浅ましいと恥じるのだが、指は止まらない。
「あ……」
 つぷ、と指先が秘裂に飲み込まれ、淫蜜が絡みつく。
「だ、めっ……」
 こんなことをしている場合ではない。やめなければと思えば思うほど、意思とは逆に快感が昂ぶってしまうのだ。
 遠慮がちに触れていた手は動きを次第に大きくして、立ってきた乳首を摘まみ、肉芽と淫裂を擦り上げる。
 湯が大桶へ流れる音に紛れているが、シェリアの秘所からは粘り気のある水音も聞こえ始めていて、彼女は眼を固く閉じて快楽を深く味わう。
 濡れそぼった秘所へ、細い指をもう少しだけ挿入――……させようとした瞬間。
 
「――……扇情的な身体の洗い方だな」
 
 扉の開く音の後、愉しげな声が聞こえた。

 扉を開けたのは当然同じ部屋にいるカインだったのだが、目撃されたことにショックを受け、青ざめた顔のままその体勢で動かないシェリア。
 それをカインはドアにもたれかかって観察している。
「これ、は……」
「これは?」
 促すように同じ言葉を続けるが、シェリアは視線を逸らし、違う、と申し訳なさそうに呟いた。
「違うと言う意味が分からん。何が、何と違うのか……分かるように教えてくれないか?」
 そう告げて浴室内に足を踏み入れたカインも既に裸だったためか、シェリアの狼狽ぶりは見ていて滑稽なほどだ。
 既に見慣れたはずなのに、カインの裸体を見ないよう視線を方々へ彷徨わせるが、その間言い訳も必死で考えている。
「あの、私、か、身体を洗っていて……」
「それならば、なぜタオルがそこに転がっている?」
 カインの視線の先……シェリアの足下には、確かに先ほどまで使っていたタオルが落ちていた。
「泡が、ぬるぬるして……だから少し……使いにくい、の……」
 語尾は小声で聞き取りづらいが、カインには『泡がぬるつく』という意味が分からない。
 何を言っているやらと呟きながらもシェリアが使っていたタオルを拾い上げ、軽く握ってみる。
「……確かに、少々滑りがいいというか、ぬるつくという意味にも取れる」
 手の中で何度もタオルを握っては開くを繰り返すうちに、石鹸にしては少々強い香りに顔をしかめて、凄い匂いだと悪態をついた。
「え……いい匂いだと、思ったんだけどな……」
「ずっと嗅いでいたら鼻が利かなくなる」
 そう言って泡だらけの手を見つめた後、おもむろにシェリアの胸を指先で突いた。
「きゃっ!?」
「なぜ風呂場で自慰をしていたのか聞きたい」
「そっ……そんなんじゃ、なくて……」
「じゃあ何だったんだ、虫でも入ったか」
「は、入るわけないでしょ!!」
 はっきり自慰と言われたシェリアは、顔を真っ赤にしてそうではないと抵抗したが、自分でも『していた』という自覚は当然ある。
 だが、何が原因だったか、と問われてしまえば、自分もはっきりとは分かっていないのだから答えづらい。
 しかし、年若い娘が好きな男に自分の身体を慰めていただろうと言われて、そうだとはっきり言えるだろうか。
 シェリアもまた恥じらいはあり、指摘されても認めたくはなかった。
「か……」
「か?」
「……痒かった、から……」
 その言葉を聞いたカインからは表情が消え――次の瞬間、彼は噴き出す。
「痒かった?! そうか、面白い答えだな……全くその可能性を考えていなかった! 確かにずっと馬に揺られていれば汗もかくだろうな」
――もっと、気の利いた嘘をつけば良かった……。
 そう思っても、もう遅い。カインは笑いを堪えてシェリアを見つめているし、彼女自身ももう少し何かあったはずだと激しく後悔している。
 ここから逃げ出したくなったが、もうこうなれば開き直るしか手はない。
 そう思っていると、カインはシェリアの腕を引き、抱き寄せた。
「とりあえず、オレの身体も痒いところがあるかもしれん。少々洗いながら見てくれないか?」
「あるかもしれない、って……今は、ないよね?」
「我慢している。身体を洗ううちに、我慢できなくなるだろう……お前のようにな」
 何かを含む物言いにシェリアは恥ずかしくも、期待のようなものが入り交じる。
「洗ってくれ」
「……わ、かった……」
 また床に落とされているタオルを手に取ろうとすると、カインはその手を掬うようにして取り、違うと首を振った。
「シェリィの身体で洗ってくれ」
「……っ!?」
 一国の皇子が、なんと破廉恥な事を言うのだろうか。
 シェリアはとんでもなく衝撃的な言葉に口を開閉させたが、カインは動じない。
「部屋にあった本に載っていたぞ」
「そ、そんなのどこの部屋にあったの?!」
「なに、さっきそこで見つけたものだ」
 どんな内容の本であれ、カインに性的な興味を持たせた本をシェリアは心密かに恨む。
 しかも、そんな恥ずかしい事をしれっとした顔で言うのだから、カインへの不満もむくむくとわき上がった。
「嫌よ。だいいちやり方なんて知らないもの」
「適当に綺麗に洗ってくれさえすればいい」
「……」
 どうしたらいいのかと考えてみても、とりあえずタオルを使わないとなると……手で洗うしかない。
 石鹸を掴み、湯を少量かけて石鹸を泡立たせると、椅子に腰掛けているカインを仰ぎ見た。
 カインはただ頷くだけで、シェリアの自主性に任せる方針らしい。
 恥ずかしいと思いつつシェリアは立ち上がると、両手でカインの首に触れて、ゆっくりと擦る。
「首は絞めないでくれ」
「あんまりひどい事を言われたら、力を込めちゃうかもしれないから」
 なるべくカインを刺激しないようにとゆっくりした速度で耳の後ろや鎖骨をシェリアの細い指が通っていく。
 しかし、カインの目の前には所々泡で隠れた豊満な胸が誘うようにぷるぷると揺れ、そこから気を逸らそうとすると指の動きはもどかしく、カインの心を乱す。
「……そういう本が売れる訳だ……」
 カイン一人で何かに納得している様子だったが、シェリアはその言葉の意図は掴めていない。
「どうかした……?」
 不思議そうな顔を浮かべたが、カインは何でもないと言い、続けるように目で促した。
 当然ながら、手で洗っていると泡はすぐに無くなってしまう。何度も石鹸を泡立てながらカインの胸を洗っていると、カインが石鹸を貸すように言ってきた。
 ようやく解放されるのだと内心喜んだシェリアだが、カインはシェリアの胸に泡を塗りたくる。
「手では時間がかかる。身体で洗ってくれと言った」
「や、む、胸でやるのはなんか、変じゃない!?」
「抱きつくようにすれば胸も背中も洗えるだろう?」
「……どこでそんな、厭らしい事覚えてくるの……?」
 恥ずかしがるシェリアの事を楽しそうに見つめるカインの顔が面白くない。
 シェリアは頬を膨らませ、それでもカインの期待に応えようとする健気なところが背を押したらしく、カインにおずおずと抱きついて背に手を回す。
「う、動き、にくい……」
「立った方がいいか」
「ん……」
 立つとカインの方が頭一ツ半ほど高いのだが、先ほどよりはずっと洗いやすい。
 シェリアは身体を擦りつけるようにしたり、下にゆっくり屈んでは立ちあがるを繰り返したが――予想以上に恥ずかしく、そして自分にも刺激がやってくる。
――どうしよう……気持ちよくなってきちゃった……。
 泡が潤滑液代わりとなっているからか、肌に触れる感触はくすぐったい中に性的興奮を呼び起こし、シェリアの感度を高めていく。
「ん……っ」
 胸を擦りつける動きが次第に弱まっていくと、カインはまだ終わっていないと囁くが、婚約者の上気してとろんとした顔に、カインは一瞬息を呑んだ。
 息を荒くして欲情しているのだと理解したが、もう少し焦らしたいという気持ちが勝って、椅子に座り直す。
「足も残ってる。洗って」
「は、い……」
 よろよろと胸に挟もうとするが、カインはシェリアの太ももを軽く叩く。
「足に挟んで洗う方が早くないか」
「……やってみるね」
 彼女も多少は乗り気になってしまったのか、早く終わらせたいのか随分素直になってしまった。
 カインは心配そうにシェリアを見たが、自分の情欲も滾ってきたのは正直なところだし、なおかつ命じてしまった以上は今更やめるとも言いづらい。
 シェリアはカインの前で足を開き、太ももに挟むと、意を決して腰を揺らす。
「あっ……?」
 秘部がカインの足に擦れてしまい、戸惑いの声を上げるシェリア。
 恥ずかしさと快楽にぴくぴくと小刻みに身体を震わせ、カインと視線が絡み合うと目を閉じた。
「み、見ないで……恥ずかしいから……」
「恥ずかしいのはシェリィだけではないんだが」
 シェリアが腰をくねらせる度に、彼女の太ももには何か硬いモノが当たる。
 カインにとってはシェリアの痴態を目の前で見続けているわけだから、そこが反応しなければ少々男としては異常である。
 それに、シェリアが動く度に、指先には柔らかい尻と石鹸の泡とはまた違うぬるりとした感触も伝わってきて、じっとしているのが惜しいほどだ。
「ふ、あぁっ……、ごめ、なさ……、ちゃんとぉ、動くッ、から……」
「いや、もうそのままでいい……」
 カインはシェリアを跨がらせたまま足を開き、隠す物がないシェリアの秘所に指を近づけ――触れる。
「ひ、んっ……!」
「ここから溢れている蜜が、泡を流してしまうからな」
「そんな、に、出ない……ぁあ……!」
 愛液でしとどに濡れた指は充血した陰核を愛撫し、更なる快感がシェリアを襲う。
 ぬちゅぬちゅという卑猥な音が自らの秘部から漏れているばかりではなく、唇から漏れる恥ずかしい声もカインに聞かれているのだ。
「や……だぁ……、ゆる、してぇ……」
 脱力しそうな身体をなんとか支えるようにしながら、シェリアは与えられる快感に屈しないよう耐え続ける。
 だが、魔力相性というものが引き起こすシェリアの体質はカインも当然よく知っていた。
 柔らかな唇を吸い、舌と唾液が絡み合うと――もう、シェリアはそんなに長く耐えられまい。
 現に、シェリアはカインの胸に手を置き、駆け巡る快感の行き場が無いのか、小さく身体を震わせている。
「そういえば痒かったとか言っていたな。収まるまで少し掻いてやろう」
 言うや否や、カインの指がシェリアの膣口に侵入し、膣壁を蹂躙していく。
「や、あっ! あんっ、カイン……はげ、しっ……」
「一本では足りないか?」
 ぬず、と指がもう一本埋められるようにして入り込むと、シェリアは顎を仰け反らせてカインの背にしがみつく。
「――……っ! あ、はぁ、っ……!!」
 腰を浮かせ、快感から逃れようとしているようだが、指を動かしやすくなっただけの事。
 カインの指はシェリアの弱い部分を探ると、一挙一動に反応するかのようにシェリアの嬌声が上がる。
「も……ダメッ……、わた、し、ヘンになっちゃう……!」
「構わない。オレももう――変だ」
 カインも私に欲情している。
 そう理解してしまった途端、シェリアの快感は一気に押し上げられた。
「はぁん、うぅっ……あぁあ……っ……! 」
 シェリアの身体が痙攣しているかのように何度も大きく震えた。
 
 淫らな蜜が溢れ、指を伝い、カインの足や床にもぱたぱたと滴が落ちていく。
 
「……シェリ……い、ッ?!」
 カインが大丈夫かと尋ねる前に、彼の雄々しいモノはシェリアの手で包まれる。
「カインのここも、よく……してあげるね……」
 竿から付け根から撫でるようにシェリアの指は動き、僅かな泡の滑りがカインの性欲をますます持って刺激する。
 奉仕しようとするシェリアの気持ちは嬉しいのだが、カインももう我慢できそうにないのだ。
「シェリィ、すまない……」
「ん?」
 シェリアの腰を掴み、カインはシェリアの膣口に己の肉槍を押しつけて上下に擦る。
「あ、ん……っ」
 その刺激でさえ辛そうに、カインは息を荒げながらシェリアを見つめた。
「もう――挿れたい」
 ぬるぬると竿全体に愛液が絡みつく。カインが強く求めてくれるのが嬉しくて、シェリアも身体を震わせながら頷く。
「うん……私も、カインが欲しい……」
 シェリアの身体をしっかり抱き、カインは怒張を淫らな花弁にあてがうと、ゆっくり挿入していく。
「あ、はあぁっ……!」
 下腹部から背を伝う快感に身悶えするシェリアを押さえつけるようにして、カインは強く腰を打ち付ける。
「はぁっ……、かい……ン! いっぱ、い……したら、すご……あぁっ!」
「何言ってるか、分から……ないな」
 シェリアの胸に指を食い込ませ、握るように強く揉みしだくと、彼女はあられもない声を出す。
 カインに見つめられるたび、シェリアの胸中に愛しさがこみ上げて、なぜだか泣きたくなる。
「痛いか?」
 シェリアの目に涙が溜まっていることに気づき、カインが動きを止めて聞いてくるが……シェリアは優しく微笑み、大丈夫だと伝える。
「もっと……していいから……」
「……嫌なら言えよ?」
「うん」
 頷くのを見てから、カインは再び抽送を始める。
 奥まで突いて引き戻すと、柔らかな媚肉が白濁した蜜と共に絡みつき、互いの身体から香る石鹸の匂いとは違う、性の生々しい臭いが鼻孔に届く。
「……はあ……あっ……!
カイン、す、きぃ……! 大好き……!」
 シェリアはカインの耳元で何度も愛を囁き、カインを感じようと自ら腰を振る。
 カインはそれを聞きながら、シェリアの首筋に軽く歯を立て、ひと舐めした後強く吸う。
「あっ……そんな見えちゃうとこ、ダメ……!」
「チョーカーで隠れる所だ」
 首筋を吸われ、蜜壺の奥まで乱されて、自分でも喘ぎ声を止められない。
「あぁっ……! あん……ふ、うぅ……んッ」
 いつもと違う、貪るような性行為。
 ただ同じなのは、カインに好きだと伝えれば、彼は本当に一瞬だけ、悲しげな眼をするところだけ。
 彼はシェリアに好意があると言ったこともない。
 シェリアも本当はカインがどう思っているかは知りたいと思っているが、知りたくないとも思っている。
 愛していると言われてしまえば、きっと自分はカインを強く求めてしまう。
 だが、愛していないのだと知れば、リエルトは――彼女とカインの息子は、愛のない両親から生まれてきたのかと不憫になる。
 だから、聞きたくない。
 カインはシェリアを気遣ってくれるしリエルトを大切にしてくれる。シェリアもカインとリエルトを心から愛している。
 その事実は――十分幸せなのだから。
「ふぁあ、あん……! カイン……!」
 涙を零しながら、シェリアは押し寄せる快楽と埋まらない心の空虚に耐えるようにカインに強く抱きつき、爪を立てる。
「く……っ」
 そろそろ射精が近いのだろう。
 カインは歯を食いしばり、更に動きを早める。
「あ、あうっ……!
カインっ……! はぁ……あ、っ、も、わたし、も、だめっ、ダメええっ……!」
 話す事もままならないといった様子で、シェリアは途切れ途切れの言葉を嬌声と共に紡ぐ。
 今日は薬――いわゆる避妊薬だが――を飲んでいない。
 話せば長くなるため割愛するが、カインのような特定の神の加護がある王家は、子が産まれにくい。
 それゆえに妊娠する率も低いが、ゼロというわけではない。
 薬を飲んでもゼロにはならないが、それには近づく。
「も、うっ、あ、あぁあーッ……!」
「っ……」
 激しく身体を震わせ、絶頂を迎えたシェリアの柔肉から自身の猛りを引き抜くと、彼女の滑らかな肌に精を放つ。
「あ、んっ……!」
 迸りの熱さに身じろぎし、とろんとした目つきで腹部や胸に散った精液を指で掬い、荒い息をつく。
「たくさん……出てる……」
 指先に付着した精液を、唇元に運ぶと、彼女は赤い舌を出し、それを含む。
「なっ……何してる……!」
「もったいないから……」
「男なら誰でも出る。口を注げ」
 それでもシェリアは少しばかり心残りらしく渋っていたが、もう一度カインが厳しめに言うと、大人しく洗い流す。
「今度は、ちゃんとナカに頂戴ね」
「……どこでそんな卑猥な言葉を覚えてくるのやら」
 すると、シェリアは小さく笑って。
「あなたが、そう思わせたのよ」
 と言って手桶に汲んだ湯をカインの肩口からゆっくりとかけた。




「……どこへ行っていたのですか。みんな心配していましたよ」
「宿屋の主人に風呂に行くと言ったはずだが」
 宿に帰ると、ラーズが二人を出迎えてくれたが、形の良い眉がつり上がっている。
 カインも、ラーズには弱い。
 それに、風呂に入る前にアレコレとしてしまった手前、シェリアを大切にしているラーズに後ろめたい気持ちも無いわけではなかった。
「昼前に出て夕方……随分長風呂ですね」
「…………」
「兄様、あの……本当に」
「シェリアはコートの紐をきちんと結んでから、先にレティシス達と合流しなさい。
一階の酒場でようやく食事をしています」
 有無を言わさぬ口調に、シェリアはハイと返事をする他なく、カインを不憫そうに見やってから、その場でコートの紐をきつく結ぶと申し訳なさそうに離れていく。
「……なんです、二人してこんな香りを放って……娼婦の石鹸でも使いましたか」
「……なに?」
 意外そうな口ぶりに、ラーズはこう教えてくれた。
 大きな街には、逢い引き用の店がある事。
 そういった場所は、娼婦がよく客を引っ張り込むもので、風呂も設置されている。
 体臭や精臭を隠すために、強く匂う石鹸が置かれているらしい。
「……上着の前が開いていましたからね。
シェリアの露出で娼婦だと判断されたのでしょう」
「そうと決まった訳では」
 反論しようとしたカインに、ラーズはぐっと怒りを堪えたような顔で、いいですか、と詰め寄る。
「……この辺に、大衆浴場はありますが、そちらも混浴です。
宿の風呂が嫌なら、そこも当然無理でしょう。
残るのは、そういった時間貸しの引き込み宿です……」
「……知らなかったんだ、そういう施設は」
 ようやく白状したカインを、全く、と叱るラーズのこんな表情は、やはり兄妹だけあって似ている。
「……その、何が、とは言いませんが……程々にお願いします」
「そ、そんなにはしてないだろう」
「聞かれても知りませんよ!」
 これ以上余計な事を言えば、ラーズに杖で撲殺されるかもしれない。
 カインはわかったと嗜めるように返事をし、取り急ぎその場を収める。

 後にラーズがシェリアにも諭すように話すと、彼女も恥ずかしがりつつ頷いたが――……。

「兄様、そんな事どこで知ったの……」
「……連れて行かれたことが有るからですよ」
 と平然と返したが、まさか兄が娼婦遊びを、と心配した時、ラーズはシェリアに『宿と間違えて、妻と入ってしまった事があるのだよ』と苦笑し、カイン様には内密にと、口元に人差し指を立てた。

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タイトルとして使用させていただいているお題
【それでも好きだよとそっと囁いた】は、Regulus様よりお借りいたしました。