空の色

「敬語はやめろよ。カインでいい」
「……でも、兄様もカイン様って」
「ラーズにもカインって呼んでもらう」
 いいと言われても、この国の皇子である。
 シェリアは困った顔をしていたが、カインは『だったら』と――口を開いた。

 木々がそよ風に葉を揺らしはじめた、萌ゆる新緑の季節。

 カインは再び、父に同行してイリスクラフトの家に向かっていた。
「まったく……。勝手な約束をこじつけおって。こちらでもお前の許嫁候補は多々あったというのに……」
 数ヶ月前、イリスクラフトの娘に同情心を寄せた結果、多大な代償を負うことになったとアレスは未だにぶつぶつと恨み言を呟く。
 あれからアレスは決まりかけていた他の縁談話を白紙に戻すという事を行い、詫びの書状や贈答物の手配などもしなければならなかった。
 それを毎日のように聞かされ続けたカインは、別に誰でもいいじゃないかと答える。
「シェリアは頑張ると言っていた。それに、イリスクラフトもそれなりの家柄だってラーズも言っていたぞ」
「確かに、悪くはないが……あの娘は刺繍が出来るのか?  社交的なのか?  将来見目麗しくなるかどうかでさえ……」
 その点あの国の誰が良かっただのと、まだぼやき続ける父の姿を見て、カインは面倒くさいなと幼心に感じた。
「そういうのは父上の趣味で決めないでほしい」
 生意気なことを言った息子の頭に、アレスは拳を落とした。

「男はどうして、女のことでとやかく考えるんだ」
「その場合……家族になるからではないでしょうか」
 イリスクラフトの屋敷に到着し、ラーズの部屋に通されたカインは、先ほど叩かれた事が腑に落ちないらしい。若干むくれた様子で、痛みの残る頭頂をさする。
 そんなカインを、無表情で見つめるラーズ。
 年齢は1つ上だというだけなのに、彼は相変わらずの落ち着いた態度で、物事にあまり動じるようなそぶりはない。
「ラーズは、許嫁とか作るのか」
「もういます」
 あっさりとした返事に、カインはえっ、と驚きの声を上げてラーズの顔を凝視した。
「そんなに驚かなくても……カイン様も成り行きとはいえ許嫁が出来たでしょう」
「まぁな。で、ラーズの許嫁は自分で決めたのか?」
「いえ、互いの父親同士で。わたしも多大な問題がなければ……」
 そういうのは考えていませんでしたから、というと、カインもそうだよなと深い同意を示した。
「……シェリアって、刺繍とかするのか?  踊りとかは?」
「刺繍をしているところを見たことはありませんが、中庭で飛んだり跳ねたりしている事はよくありますよ」
 仰る『踊り』ではありませんが、と後から付け加えて、そういう条件が必要なのですかとラーズは逆に聞いた。
「父上が聞いてきただけだ。それより重要視しているのが、将来美人になるかどうかって事みたいだけどね」
「それは……個人の見解によって美醜は違いますからね……」
 流石にラーズも答えに窮し、言いづらそうにしている。
「……カイン様は、シェリアをどうお感じになったのですか」
「……別に普通だと思うけど」
「普通、ですか」
 普通、ともう一度繰り返し、物言いたげなラーズの視線が向けられる。
 これはいつものようにカインの様子を伺う視線ではなく、ラーズに否定の意志があるように見受けられた。
「あ、あまりよく見てないんだよ。そういえば、シェリアは?」
 ラーズの視線に晒されるのが嫌で、カインは咄嗟に話題を変える。
「シェリアなら、もういますよ」
 そこに、と、本棚の後方を指し示すラーズ。
 指先を目で辿れば、話題的に出るに出れずオロオロしているシェリアの姿があった。
「な、なんで黙ってたんだ!  いるならいるって最初に言えよ!  口があるだろ!」
「だ、だって、読んでいた本を片づけてから挨拶しようと思っていたので……!」
 いろいろ聞かれてしまったことに焦ってまくし立てるカインに、ごめんなさいと思わず謝るシェリア。
「あの、皇子様……この間の事、ありがとうございました。あんなことになっちゃって……」
「別にいいよ。許嫁とかは、いつか決めることだったし」
「なるべく、ご迷惑はおかけしませんから……頑張ります。いっぱい、勉強も習い事もします。美人には、なれないかもですけど……」
 さっきの話は一部始終聞かれていたようだ。
 気にしなくていいともう一度言ってから、カインはシェリアを観察するように見つめる。
 腰まである長いストレートの髪。鬢の毛は胸元までの長さに一房ぶん、段を入れて切られている。
 たれ目がちだがぱっちりとした金の瞳。じっと見据えると視線を幾度か逸らされた。
 白い肌は健康的……という程には見えないので、あまり日に当たらないのだろうか?
 顔は整っているため、醜いというわけではないのだが。
 まじまじとシェリアの詳細を見た後で、カインは素直な感想を伝える。
「……シェリア、あんまりかわいくないんだな」
 面と向かって放たれた衝撃的な感想に、シェリアもラーズも絶句し、思考することを数瞬の間放棄したようだ。
「全体的に暗い。ビクビクしてるし。もう少しはっきりしろよ」
 数々のダメ出しがシェリアに容赦なく告げられ、どうしたらいいのか分からない様子のシェリアは、目がだんだん涙で潤んでくる。
「な、泣くな!  バカ!」
「カイン様、そう怒鳴らないでください」
 ラーズがシェリアとカインの間に割って入り、妹の頭を腕に抱いて胸を貸してやる。
 シェリアのすすり泣きが小さく聞こえ、ラーズの冷たい眼と相まって、今度はカインのほうが挙動不審になりはじめる。
「落ち度がこちらにあるとはいえ、美醜や性格の改善はある程度のお時間を頂きたく思います」
「違う、シェリアはかわいくないけど、そういう、顔の、ではなくて」
 うまく言葉が出てこないのか恥ずかしいのか、カインは続きを言うことなく沈黙し、シェリアとラーズの顔を注視する。
 十分すぎる間があった後、観念したようにカインは口を開いた。
「気にしすぎなんだよ、相手の事とか。もう少し自分らしさとか出せばいいと思うんだ」
「ふむ……」
 その言葉に納得する部分があったのか、ラーズは否定とも肯定ともつかぬ相槌を打って、シェリアの頭を撫でた。
「でも、この間『わがまま』って皇子様は私に言ってた……」
 ラーズの身体にしがみついたまま、シェリアは顔をゆっくりとカインへと向け、彼の表情を伺う。
 シェリアを見るカインの表情は、呆れているようにも思えた。
「だって、家から離れてベルクラフトに行きたくない、でも条件は呑めない、っていうのは通らないじゃないか。俺が同じような事を爺に言ったら、こっぴどく叱られて父上に言いつけられるんだぞ?」
 しかも殴られる、と不服そうに言うので、ラーズも『わたしも似たようなものですよ』とシェリアの涙を拭いながら答えた。
「多分、わたしたちが大人になれば……父が求めたもののいくばくは伝わるのかもしれませんが。大人には大人の、子供には子供の想いがあって。必ずしも伝わるとは限りません」
「……うん」
「カイン様のお気持ちでさえ、ご家族であるアレス様にも汲み取りづらい部分があるのでしょう。 我々はカイン様のお人柄や性格もまだ把握していません。今後少しずつ、知る機会を頂きたいです」
 ラーズがカインに柔らかい口調で告げると、カインも茶の入ったカップを掌で包みながら、承知したと頷いた。
「長い付き合いになるわけだから、そう思ってくれるのは嬉しい。俺もラーズの事は知っておきたい」
 そう言った時に、ラーズが視線を妹のほうへと移したのを見て、カインは慌てて『シェリアも』と付け足した。
「ラーズとシェリアは幾つくらい離れてるんだ?」
「3歳離れています」
「ということは、シェリアが俺の2つ下か。そんなに大きく離れていなかったんだな」
 当然城内では年上しかいなかったし、アルガレスの親戚にあたる者も、自分と年が近いものはいない。
 その点でも、カインはラーズやシェリアへ親近感を覚えたようだ。

「……申し訳ございません、カイン様。そろそろわたしが魔術を学んでいる先生が来る時間になってしまいました。シェリアをしばしの時間話し相手としておそばに置かせていただいてよろしいでしょうか」

 壁にかかった時計を見上げて時間を確かめると、ラーズがカインへと申し訳なさそうに告げた。
「わかった。どこへ行けばいいんだ?」
「じゃあ私のお部屋は?  隣にありますから」
 無言で頷くカイン。シェリアは兄に軽く手を振って、カインを伴いながら部屋を出る。
 こっちです、と案内するシェリアの後ろをついていきながら、カインは多少の不安を感じていた。

(……シェリアと一緒か……)
 本心としては、また泣かれたりすると困ると思う気持ちもあり、気は進まなかった。
「開錠(デルファズ)!」
 そんなカインの気持ちなど当然知るはずもなく、シェリアは手のひらをドアに向けると、元気よく短い単語を発した。
 そのままドアノブを掴み、扉を開けながら『どうぞ』とカインにどこか誇らしげな顔を見せた。
「魔法を習い始めたのか」
「ううん。これはずっと前。最初に覚えた魔法、です。これを覚えないと、お部屋にも出入りできなくなるから……」
 家中の扉に、魔法の鍵がかかっているのだろうか。
 いつも通される応接室のような場所は、そんなことはなかったので、察するに個人の部屋や書庫などにはかけてあるのだろう。
 シェリアの部屋は、ラーズの部屋とは違い……小さな部屋になっていた。
 本棚も小さい物が1つ。クローゼットと天蓋付きの小さなベッド、質素な机の上に、名も知らぬ白い花が1輪花瓶に活けてある――だけだ。
「……小さい部屋だな。勉強するのか、これで」
 カインは本棚に近づき、書物をひとつ手に取るとぱらぱらとめくってみた。
 文字は読めるが、さすがに内容を読み説こうとは思わずただ最後までめくるだけ。
 本を閉じてシェリアを振り返ると同時、彼女はこくりと頷いた。
「お勉強は、兄様のお部屋でしているので……ここには基本のものしかないです」
「じゃあこの部屋は寝るときくらいしか使わないのか。だったら、寝るところもラーズと一緒にしたらいい。まるで物置みたいな部屋だ。うちの爺でさえこんな狭い部屋は使わないぞ」
 そう言って本を棚にしまうと、シェリアはふくれっ面でカインに『意地悪』と言い放った。
「皇子様、私に意地悪な事ばっかり言う」
「意地悪なんてしてない」
「してる」
「してない」
 シェリアが言い返すと、カインもそれを訂正するために否定する。
「してる!」
「もういいよ、してるって事で……」
 2人は数度同じやり取りをし、ついにはカインが折れた。
 本心では認めたわけではない。このやりとりがあまりにも不毛だし、続ける意味がないと思ったからだ。
 シェリアから視線を外し、カインは明るい室内に目を留め――明るいなと呟いた。
「この部屋……そうか、物が少ないから、ラーズの部屋よりずっと明るいんだ」
「本はあまり日に当てたらいけないっていっていたから。兄様のお部屋には、あまり日が差さないようにしてあるんです」
 シェリアが窓を開けると、清々しい風が室内に流れ込んできた。
「何もないけど、私はこの部屋が好きです。
森も屋敷の周りにはいっぱいあるから精霊力も豊富で、小鳥も時々餌付けするから来てくれるんです。城下町も見えるし……ほら、遠くにお城も」
 にこにこと機嫌良さそうな笑みを浮かべながら、あちらこちらを指差すシェリア。
 その表情を、ずっとカインは見つめていた。
「……なんだ」
「えっ?」
 カインが何を言ったのか聞き取れなかったので聞き返してみたが、返事はなかった。
 だが、カインはシェリアの視線から逃れるように椅子に手をかけ、引きながらこう答えた。

「ちゃんと、かわいい部分もあるんだな……明るい所で見てなかったから、少し、不健康そうで暗い奴なのかって思った」

 ごめん、とカインは謝って椅子に腰掛けたはいいが、なかなか顔を上げることができなかった。
 シェリアが顔を赤らめて俯いていたら、言ったこちらも恥ずかしいな――と思いながら、覚悟を決めるとシェリアのほうへ顔を向ける。

 だが、シェリアは今のやりとりなど気にする様子のないまま、窓の外を眺めていた。

「……おい」
「なんですか?」
 予想以上に、平然とした口調である。
 カインの抱えていた恥ずかしさはどこかに吹き飛んでしまった。
「なんですか、じゃない。ちゃんと可愛い、って謝っただろ」
「可愛いって謝る、という意味がよくわからないです……」
「可愛くないと言ったことを謝るって意味だ!」
 分かれよ、とカインが語気を強めると、シェリアはそれなら分かりました、とくすくす笑いながら、肩越しに振り返ってカインを見つめる。
 細い銀の髪は柔らかく日に煌めき、風に毛先をそよがせていた。
「謝っている感じはしないけど……皇子様に可愛いって言われたのは、嬉しいかな」
 良く見れば、シェリアの頬は赤く、聞いていないふりをしたのは気付かれたくなかったからだろう。
「き、聞いてたら、ありがとうとか返事しとけばいいだろ……!」
 相手が照れている事を知ってしまったカインも、とても恥ずかしい事を言ったような気がして、彼女の顔を直視できなかった。
「皇子様?」
「その皇子様、とか敬語もやめてくれ。シェリアやラーズとは、友達にもなりたい」
 友達と聞いて、シェリアは少し悲しげな顔をする。
「お友達なんて無理です。私たちと皇子様は――」
 シェリアがすべて言い切る前に、カインは素早く立ち上がると指を突きつけた。
「シェリアの悪い所は!  やる前に無理だっていうところ!  それは直せ」
「……は、はい」
「あと敬語も使うなって言った。公式の場では使ってもいい、けど、それ以外は皇子様も禁止。カインでいい」
「兄様も敬語使います」
「ラーズにもカインって呼んでもらう」
 勝手に決定してしまったようだが困るのはシェリアだ。
 友達になりたいとか、呼び捨てにするなどを(ここにいない兄の分まで)決められてしまった。
 きっと兄に話せば、理由を話してごらんと言われるだろう。その理由が『友達には敬語が不要だから』だと聞いたら、ラーズもそれはできないと答えるはずだ。
「カイン、さま」
「様もいらない」
 シェリアが困りきった顔をしてみせると、カインは『だったら』と口を開く。
「あだ名で呼んでみるか?  それなら呼び捨てじゃない」
「あだ名……。えばりんぼとか、ですか」
「嫌だなそれ。もっといいあだ名候補考えようよ」
 心底嫌そうな顔をされたため、シェリアは次々にあだ名候補を口に出してみた。
「金髪、偉い人、白服、ひとりっこ……?」
「それ特徴だろ。却下」
 特に『ひとりっこ』などというあだ名は欲しくない。導入を考える余地もなく、カインは拒絶する。
 次、と促しても、シェリアは申し訳なさそうにカインの事はよく知らないと答えた。
「私、カイン様の名前すらきちんと知らないのです」
「ラーズやイリスクラフトたちから教えてもらえないのか?」
「言い出しづらくて……特に父様には」
「ああ……そういう感じはあるな」
 カインもイリスクラフトの視線は好きではなかった。ラーズがまだ親に似ていなくて良かったと思う。
「それならシェリアの母上には?」
「……母様は、いません。遠縁に行ってしまって」
 遠縁というと、ベルクラフトだろうか?  そう訊ねると、シェリアは小さく頷いた。
「ベルクラフトの……どこかは分かりません。でも……もう会えませんから」
「そうか……」
 シェリアの母親たちがどうしてベルクラフトに行ってしまったのかは興味があったが、シェリアからこれ以上聞くのは気が引けたため、カインはそこで話を終えた。

「……俺の名前は、カイン・ラエルテ・アルガレス。難しい名前じゃない」
 ラエルテ、と呟くシェリアに、カインは『先祖の名前』と言った。
「俺の眼の色、時々変わるんだ。アルガレスで最初に変わったのがラエルテだから、目の色が変わっている者の目印につけられている」
 家系図を見る時に便利だろう、と笑うカインだが、シェリアの顔が近い事に気付いて目を見開く。
「な、んだよ」
 シェリアが上半身ごとカインに近づけ、顔を……眼を覗き込むようにして見つめていたのだ。
「あんまり見るなって……近い」
 シェリアの細い肩を押しやって抵抗していると、シェリアは彼から身を離す。
「目の色、本当に変わるんですね。なんだか不思議だけど綺麗」

 綺麗という言葉は、思いもよらぬものだったため、言われたカインは反応に困っている。
 ちょっと変わっているとは自分でも思っていたが、綺麗と思う人間もいたようだ。
「すぐに変わるんじゃなくて、ゆっくり変わっていく。お空の青みたい」
「……シェリアだって、夕焼け色だろ」
 金色、と安易に表現すれば済むのだが、赤みのある黄色、が一番しっくりくる。
 すると、シェリアは『わぁ』と嬉しそうな声を上げた。
「その表現、かっこいい。なんだか嬉しいな。私夕焼けの時間は大好きです」
「俺も嫌いじゃない」
 ふわっと笑顔を向けるシェリアに、カインも微かに微笑む。
「さっきの話ですけど、カイン様を呼び捨てにもあだ名でも呼べません。失礼になります」
「じゃあ、いい。そのうちできるように呼ぶ練習しといて」
「どうしてですか?」
「俺がそうしてほしいから」
 カインがそうして欲しいというのなら、もうそうするほかにはない。
 シェリアは、頑張りますと小さく頷いて、カインを物言いたげに見つめた。
「最初は人が近くにいない時、呼んでもいいですか?」
「わかった。2人の時に」
 人が少ない時、という言葉を真に受けたカインが承諾すると、シェリアはホッとしたように胸をなで下ろす。
「はい」

 ラーズが魔法の勉強を終えて部屋から出てきたときは、もう夕暮れ時だった。
 そのままシェリアの部屋を訪ねると、カイン達はもう帰ってしまったらしく、シェリアだけがそこにいて、窓辺に持ってきた椅子に座って外の様子を眺めていた。
「カイン様に失礼はしなかった?」
 ラーズは驚かせないようにと配慮しながら先に声をかけてゆっくり歩み寄ると、シェリアは目を閉じて考え悩む様子を見せる。
「いっぱいしたかも……また怒られちゃった」
「そう……」
 ただ、きっと本当の意味で皇子は怒っていないだろう。
 冷静さより、感情のほうが先に出てしまうのかもしれない。
 ただ、怒られてしまったと言ったシェリアは悲しそうではなく、むしろ楽しそうな様子だったので、ラーズは何かいい事でもあったの、と聞いてみる。
「カイン様は、夕焼けの色は嫌いじゃないって」
 妹が揶揄することの意味はよく分からなかったが、ラーズは夕暮れ時の景色をその場から見つめる。
 どこか悲しくなるような、懐かしい様な陽の色は、柔らかく街を覆っていた。
「包まれるような……暖かい色だから、安らぐのかもしれないね」
「そうだったら、いいな――私も、お空の色は好き」
 窓枠に頬杖をついて、シェリアは目を細めると、遠くに見えるアルガレス城を眺めていた。

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